100メートル先まで存在を知らせる!『安ピカッ』誕生秘話。

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100メートル先まで存在を知らせる!『安ピカッ』誕生秘話。

ランドセル国内製造販売本数No.1※ブランド『フィットちゃん』の魅力を伝える「通学カバンを科学する」。#2では、代表の橋本が『安ピカッあんピカッ』の誕生秘話をご紹介します。

ハシモトグループ代表取締役 橋本昌樹

 

※「フィットちゃん」は、株式会社ハシモトが商標権及び背負ベルト取り付け具に関する特許権を持ち、複数社で製造販売するランドセルブランドです。[調査対象期間]2023年1月~12月[調査範囲]メーカーに限る[調査機関]株式会社東京商工リサーチ

https://www.fit-chan.com/catalog

 

1.“光るランドセル”という新たなジャンル

 

−『安ピカッあんピカッ』はどんな機能を持ったランドセルですか?

 

車のライトを反射して白く光り、100メートル先からでも視認できる安心・安全なランドセルです。一部分だけでなくランドセルの形に沿って光るのが特徴で、雨の日や暗い夜道でも視認性抜群です。また一般的なシルバーの反射材は使わず、素材メーカーと共同開発した特殊な加工を生地自体に施しているので、光が当たっていない時には反射材とわからないのもポイントです。『安ピカッあんピカッ』が誕生して10年以上になりますが、この共同開発した技術は今でも我々だけが持つ独自のものになります。

 

−ランドセルのデザインになじんでいますね。

 

そうなんです。何よりもまず子どもたちに喜んでもらうためには、“かっこいい”“かわいい”というランドセルへの憧れを損なうことなく、安全性を高められることが重要でした。反射材の部分だけ色を変えてバイカラーにすることもできるので、むしろオシャレ度は増していると思います。

 

−『安ピカッあんピカッ』以前には、反射機能を持ったランドセルは市場にはなかったのでしょうか?

 

かぶせ(蓋)に付いている鋲など、一部分が光るランドセルはあったのですが、ランドセルの形に沿って光るというものはなかったですね。『安ピカッあんピカッ』の登場によって、“光るランドセル”という新たなジャンルが生まれました。

累計販売15万個を突破したフィットちゃんランドセルでも大人気の安ピカッランドセル

 

2.親御さんの不安を少しでも軽くするために

 

−開発にいたった経緯は?

 

きっかけは「共働き世帯の増加」です。それまでも年々増加傾向にはあったのですが、2012年頃を境に片働き世帯との差が急速に拡大しました※。学童保育を利用する子どもが増え、夕方以降に一人で下校する機会も増えると、親御さんの不安も増します。そこで、仕事があって送り迎えできない親御さんの不安を少しでも軽くできるようなランドセルをつくれないかと、『安ピカッあんピカッ』の開発がスタートしました。

内閣府男女共同参画局『共同参画』2020年9月号よりhttps://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2020/202009/202009_02.html

 

−どんな風に進んでいったのでしょうか?

 

最初はランドセル自体を発光させようとしたのですが、電池式や充電式にする必要があり、発熱したり重くなったりとさまざまな懸念点が出てきたので断念しました。そこから、交通事故の発生を未然に防ぐためには、車のライトが当たった時に光ればいいのではという結論にいたり、反射によってランドセルを光らせる方向で固まりました。それで現会長である私の父が各所に掛け合いまして、反射材の特殊加工ができる会社にご協力いただけるようになりました。

スマホのフラッシュ撮影でもランドセルの形に沿って光る「安ピカッ」

 

−ランドセルの形に沿って光るというアイデアはどうやって生まれたのでしょうか?

 

最初はランドセルの全面に加工を施そうとしたのですが、あまりにもコストが上がってしまって…。いくら安全性が高くても、高価すぎてはお客さまのためにならないということで、改めてどこを光らせるかの議論が始まりました。そこで注目したのが“形”です。ランドセルって、一目でランドセルだとわかる独特な形をしていますよね。それに、ガードレールだったり電柱だったり、意外と反射材って街にあふれているんですよ。その中でただ光るだけでは“子どもがいる”という認識にまではつながりにくいと考えて、フチだけに加工を施し、ランドセルの形に沿って光らせることにしました。

 

3.思い入れのあるランドセルは取り戻せない

 

−開発で特に苦労した点はどんなところですか?

 

一番は、ランドセルの最低条件である耐久性の部分ですね。6年間使っても反射材の加工が剥げることのないよう、品質チェックを徹底して行う必要があったのですが、中でも屈曲試験はどの検査機関に出しても断られてしまいました。

 

−なぜですか?

 

ランドセルは形状が特殊なので、そもそもどう屈曲するかが難しいんですね。さらに屈曲の回数も問題で、子どもの1日って、まず朝荷物を入れる時にかぶせを開けて閉めますよね。そこで屈曲が2回。学校に行って開けて閉める、帰る時に開けて閉める。家に着いて開けて閉める。少なくとも4回は開け閉めを行うので、8回屈曲するんですね。6年間で考えると、1年のうち学校に行くのが230日として、8回×230日×6年間=1万1040回が最低限の回数ということになります。我々としてはそこにプラス数万回の検査を行いたかったので、どこも受け入れてくれませんでした。そこで、自社で屈曲試験ができる機械を開発し、検査機関を社内に設けました。

 

−すごいですね!ではそれで品質チェックの問題は解決できたんですね。

 

いえ、それでも完璧ではないんです。屈曲自体は確認できたのですが、季節によって温度も違えば湿度も違うので、1年生から6年生までの社員のお子さん30名ほどに普段の環境で使用してもらい、さらに1年間、耐久性のチェックを行いました。

 

−徹底していますね。

 

子どもたちが愛着を持って使ってくれているランドセルを途中で交換するようなことは、あってはダメなことだと考えています。我々は、新品のランドセルを提供することはできても、思い入れのあるランドセルを取り戻すことはできません。なので、発売後も社員のお子さんには引き続きモニターとして使ってもらい、何かあればすぐにフォローできる体制を整えていました。

 

−その他、特にこだわったところなどはありますか?

 

何メートル先から視認できるかという反射の度合いです。時速60キロで走っている車が、急ブレーキを踏んで停止するまでの距離は44メートルとされているので、より安全性を高めるために、100メートル先からの視認が可能になっています。ただ、反射部分に色が付いているのが『安ピカッあんピカッ』の大きな特徴なのですが、これがまた難しいところでもあるんですよ。

 

−どういうことでしょうか?

 

色によって反射の度合いが変わるんです。光を吸収しやすい色もあるので、同じ加工を施しても、この色なら100メートル先から視認できるけど、この色だと60メートル先からしか視認できないといった問題が起こるんですね。今では15色以上のラインナップがありますが、最初に発売できたのは黒と赤の2色のみでした。

現在は様々なカラー展開がされている「安ピカッ」

 

4.お客さまの声に合わせて進化する

 

−発売して10年以上になりますが、お客さまの反応はいかがですか?

 

口コミやテレビCMの効果もあり、広く認知されるようになったと思うのですが、それでも実物を見て「こんなに光るの!?」とびっくりされる方が多いですね。ショールームでまず最初に「『安ピカッあんピカッ』シリーズはどこですか?」と聞かれる親御さんもいらっしゃいますし、指名買いが多い印象です。あと想定外だったのが、光ることに対して子どもたちが興味を持ってくれたこと。「これ、光るんだよ!」と子どもから親御さんに説明しているシーンをよく目にしますし、「『安ピカッあんピカッ』じゃないと絶対ヤダ!」と言ってくれる子もいたりと、我々としては安全のために取り付けた機能が、子どもたちの“かっこいい”“かわいい”につながったことが嬉しかったですね。

富山ショールームで体験できる「安ピカッ体験コーナー」

 

−『安ピカッあんピカッ』というネーミングも印象的ですが、名付け親は?

 

会長です。機能をわかりやすく表せるように「ピカッと光って安心・安全」というフレーズから名付けたと聞いています。ここ数年は社内公募で決めるようになりましたが、以前は企画開発のど真ん中にいる父が、名付けも含め、最終的なチェックを全て担当していました。

 

−『安ピカッあんピカッ』には先代のアツい思いも詰まっているんですね。

 

そうですね。今、直販では9割近くの製品に『安ピカッあんピカッ』が搭載されているのですが、ここまで人気の機能になったのも、子どもと親御さんのためになるランドセルをつくりたいという強い思いがあったからこそだと思います。2025年度モデルでは、アッシュグレー・ピスタチオグリーン・スモークブラウン・ピーコックブルーといったお客さまからのご要望が多かったペールトーンを追加しました。これからもお客さまの声に応えながら、進化を続けていきたいですね。

 

今回紹介した「安ピカッ」の詳細ページはこちら